ある日、龍馬が八幡町の骨董屋をひやかしていると、店に入ってきた岩崎弥太郎とばったり出逢った。
「弥太郎さんよ、また、刀の掘り出し物かや?」
「これは坂本さん、妙なとこで出くわすのう」
「つい先日、ここでえい鍔を見つけたき、国許の春猪に送ってやいたぜよ」
「それは喜ばれたろう、長崎には、えいもんがたんとあるきに」
慶応3年4月に誕生した土佐海援隊の隊長は、皆さんよくご存知の坂本龍馬であり、その会計役をつとめたのが、土佐商会主任だった岩崎弥太郎です。二人は仲があまりよくなかったと言われていますが、岩崎の日記を読むと、あながちそうとばかりは言えないようです。何よりこの二人は刀剣好きという共通点があり、その話だけでも盛り上がったことでしょう。岩崎は、慶応3年6月、龍馬が夕顔丸で京都に向かったとき、せんべつとして筑紫槍の短刀を贈っています。
「弥太郎さんよ、どうぜよ、これからおまんのひいきの嘉満楼に行かんか」
「そりゃええ、ちょうどのどが渇いちょったところぜよ」

二人の刀剣談義は、それからしばらく続いたそうです。